「コミュニケーション」をだめにするのは「言葉」
先日、日産GT-Rの開発総責任者を務めた水野和敏さんのインタビューCDを聞きました。
とてもいいことをいくつもおっしゃっていました。
中でも、なるほどと思ったのは、「言葉がコミュニケーションをつぶしている」という話。
これは、GT-Rのプロジェクトを立ち上げるにあたって、仲間にどんな説明をしましたかという質問に対する答えの説明として話していたのですが、水野氏は説明なんかいらないと断言していました。
このプロジェクトは簡単に言うと、ポルシェやフェラーリに並ぶスーパーカーを予算50%で作るというとんでもないもの。
GT-Rプロジェクトを立ち上げるに当たっては、これまでの車の作り方や車の価値観、プロセス、予算をぶち壊わすことが前提でした。
そんな時に、水野氏のビジョンや価値観をいくら説明しても無駄で、通じるのは、その人の目線と表情と思いだけだと言うのです。
これは非常に深い言葉だと思います。
水野氏は事例として、アフリカの奥地で言葉が通じなくなったらどうなるかという話をされていました。
きっと、一生懸命、自分の身振りや手ぶり、書くという行為によって必死に気持ちを伝えようとするのではないですか?と。
だから、言葉で伝わるようなきれいごとは言わなくても、気持ちと自分の目指す心を素直に彼らに表現することで十分だと言うのです。
また、言葉というのは逆に人のコミュニケーションをつぶす道具でもある。
コミュニケーションが難しいというけど、難しくしているのは言葉で、むしろ言葉が通じない状態の方が、人の表情とか気持ちが伝わる。
しゃべれない英語ほど本当の気持ちが伝わるでしょう、とも話していました。
まさにその通りですよね。
これは営業でも面接でも同じことなのだと思います。
話すことがうまい人がモノを売れるわけではないし、話すことがうまい人が面接を得意とするわけでもありません。
本当の自分の気持ちを伝えることのできる人が売れるし、面接にも受かるのです。
その前提としてあるべきなのは、伝えたいメッセージを持っているかどうかなのではないでしょうか。
就職活動や転職活動に関連する話として、コミュニケーション能力の不足という話がよく出ますが、
コミュニケーション能力=話す能力
だと誤解されがちです。
コミュニケーション能力=気持ちを伝える能力(+聴く能力 だと僕は思います)
これを感じられるかどうかが大きいですね。
人材教育や育成にも直結する話として大きなヒントを得た気がします。
僕は恥ずかしながら、水野氏のことを知りませんでした。
GT-Rの開発総責任者ということで、モノづくりの話が中心かと思いきや、人と人との生々しい話が多く、とても共感しました。
さっそく、アマゾンで「プロジェクトGT‐R―知られざる成功の真実」を購入。
週末に読んでみようと思います。