上杉鷹山
MR.Mです。
先日からBOSSノートで松岡修造がフィーチャーされてます。
実際に課題図書として、「挫折を愛する」も追加されました。
でも、ほぼ同時期にもう1冊、薦められた本があります。
「全一冊 小説 上杉鷹山(童門 冬二)」です。
僕のデスクの近くに置かれた「日めくり まいにち修造!」が
毎日見つめてくるので、松岡修造ではなく上杉鷹山を読みました。
普段あまり小説を読まないので、恥ずかしながら、鷹山も著者のことも全く知りませんでした。
あらすじは、米沢藩の(既に破綻しているといってもいいくらいの)財政危機に藩主になった
17歳の鷹山が、既存の概念や勢力を打破して改革を成功させるという内容です。
三人称視点で物語が描かれていきますが、そこに著者の経営に関する知見や歴史観などが
表れていて、鷹山たち登場人物とは異なる時間軸から解説されています。
まるで、良質なストーリーテラーのようで、
「読む」というより「聞く」小説であったように感じました。
ところで、僕がこの小説で感情移入したのは、主人公の鷹山ではなく、
側近で改革の中心人物であった竹俣でした。
竹俣は抵抗勢力との矢面に立ち、鷹山の目指す改革を次々と実行していきました。
しかし早急な結果にこだわり、旧体制を壊すのではなく、しだいに取り込まれていき、
結局、彼自身が改革されるべき存在になってしまいました。
改革なんて大げさなものでなくても、何かを変えたり新しいことを始めたりする時には必ず、
慣習や固定観念など、今までのやり方が立ちはだかります。
それ自体を悪だとは思いませんが、その価値観から逸脱した事をしようとすると障害となります。
世の中には、その障害を乗り越えて栄光を手にする物語は無数にあります。
しかし、竹俣に共感したのはそこではありません。
行く手を塞ぐ障害を除くために、そもそもそれが障害にならないようにする。
とても効率のいいやり方だと思います。
「慣習が重要だ」と言う人に「慣習を捨てろ」とは言わず、
自分もその慣習に合わせた方が物事は円滑に進んでいきます。
おそらく一定の結果を出し続けることができます。彼の立場なら僕もきっとそうするでしょう。
強い目的意識と抵抗勢力とのストレスから、
目的のために手段を選ばないようになり、竹俣は腐敗していきました。
僕にも利益のために理念が霞んで見える時があります。
しかし鷹山は、今ではなく将来の利益ために理念を持った改革を行いました。
理念がないと、どうしても目先の利益に囚われてしまいます。
そのために理念は重要で、物語は理念を共有させる過程を中心に描かれています。
竹俣の功罪から、僕自身にもある危うさを再認識しました。
会社に利益をもたらすことは重要です。
しかし、会社のビジョンから離れた利益はマイナスでしかない。
ビジョンの共有を多くの経営者が重視する理由がよくわかりました。
ちなみに、J.F.ケネディが鷹山を知っていた(周りにいた日本人は知らなかった)
というエピソードに、この小説の本質を感じました。