社員が辞めない会社
先日訪問したあるシステム会社。
ここの社長は、社員が辞めないことで悩んでいました。
世間では新卒で入社した後、3年以内に3割辞めるといいますが、その感覚がわからないと言います。
確かに求人広告の作成で社員の取材をしても、新卒で入社して10年前後という社員が大勢います。
毎年数名の新卒しか採用していないので、他の中小企業と比べても歩留まりは相当高いです。
辞めない理由は、色々あると思いますが、一番は待遇の良さかもしれません。
業績がよいというのが背景にもありますが、毎年社員旅行は全員で海外。
今年もグアムだそうです。
残業代はきっちりと支払われ、給与水準も高い。
大手SIとの関係が深いためか、とても中小企業とは思えないくらい、社内制度も整備されています。
聞いていると一見、何不自由ないように聞こえます。
居心地のいい会社ということで、順風満帆かと思いきや、居心地の良さが逆にあだにもなっているとのこと。
社員がしがみついてしまうんですね。
ベテランになり、仕事の意欲や生産性が落ちているにも関わらず、会社の中では高給取りになっている社員が数名いると。
その社員が改善や改革に興味がなく、権利ばかりを主張するそうです。
その行動が、回りの社員にも負の影響を与える。
社長は、「モンスター社員」と呼んでいましたが(笑)、
モンスター退治に弱っているそうです。
冗談ではなく、ホントの話。
確かに、都内では、社労士さんなどのセミナーで、
「どのように問題社員に辞めてもらうのか」といったセミナーも
多く開催されています。
結構人気があるテーマのようです。
今は業績は良くても、5年後10年後を考えると不安要素はいっぱいあるもの。
この会社も取引先の業界再編の動きが活発化していて、ここ数年の間に、どこに経営資源を集中させるのか、また、新たな事業フィールドの開拓をどうしようかと社長の悩みは尽きないようでした。
聞いているだけでも、将来に向けた経営課題があることは明白です。
これだけ変化している世の中ですから、数年先を見据えて、改革の準備を常に続けていないと会社は生き残れません。
その改革意欲を失っている中堅社員は社長のモチベーションを下げるには十分です。
会社の10年後を考えたら焦ってしかるべきなのですが、自分の目の前しか見えないのですね
当たり前ですが、これが経営者と社員の視点の一番の違いだと思います。
社長の言葉が印象的でした。
「30年継続する会社は数%だというが、その難しさを肌身で感じている」と。
会社のステージによって、悩みは違うものですね。
現在の業績は極めていいのに、数年後に解決しなければならない難問に直面し、苦悩している社長を見て、これが経営者だと思いました。
もちろん、苦悩と言ってもいつも暗い顔をしているわけではありません(笑)
暗く悩む時もあれば、明るく悩む時もある。
そんな両面を見れるのが、この仕事の面白さですね。