経営における人件費の大きさ
サービス業(小売業)でいろいろな業態を数十店舗展開している企業の社長とお会いしてきました。
景気の影響で店舗の売り上げは伸び悩んでいるようで、数ヶ月前から業績改善に着手しています。
各店舗で話し合った結果、売上の減少はどうしても避けられないので、利益を出すために経費をできる限り下げていこうということになったそうです。
この社長と話したのは、「経費の削減」を考えたときの、経営者と社員の視点の違いについてです。
社員は一生懸命経費を下げるために、光熱費や消耗品などの使用頻度に必死になって気を配るようになったそうです。
確かにこれはとても大事なこと。
でも、経営者が経費削減を考えるときは、違う視点で考えるようですね。
無駄だと思う部分が違うようです。
どんな視点かというと、
例えば、この会社の店舗では、始業前に30分全員で掃除をしています。
1店舗に社員とアルバイトで10名以上いますが、全員で掃除しています。
でも、全員が必死になって掃除しているわけではありません。
経営者はここを「無駄!」だと考えるんですね。
アルバイトは半分の人数で交代制にすれば十分じゃないかと。
仮に、アルバイトの勤務時間を一律30分削減したらどうなるか?
アルバイトの平均勤務時間が6時間だとすると30分は、約8%の削減です。
この会社では、パートアルバイトの月間労働時間が全店舗で4万時間。
すごい数字ですが。。。
そうすると、年間で48万時間のうち、8%で、38400時間の削減になります。
時給1000円で計算すると、約4000万円のコスト削減なんですね。
こんな計算を瞬時にするのです。
これは、いくら光熱費や消耗品に気を配っても到達できない数字です。
つまり、経営者が経費削減を考えたときに、無駄だと感じる部分が大きいのは、人件費だということです。
事務費と人件費では経費に占める割合が全く違いますので、ウェイトの大きい部分にメスを入れたいと考えるということですね。
とはいえ、この社長はアルバイトの勤務時間を30分削るなんてことはしません。
あくまで、従業員の時間コストが一番高いことを認識させて、無駄な時間をいかに付加価値につながる時間に変えていくのか。
そういう視点で考えられる社員に育ってもううための努力をしているのです。
これには時間がかかります。
少しずつ、少しずつ、意識改善できるように指導していく必要があります。
安易に人件費削減をするのではなく、社員の意識改善という経営課題にしっかり向き合う。
そんな姿勢を持ったこの社長が、僕は好きです。
中小企業の社長と会ってていいなあと思うのは、こんな瞬間です。
社員にとっても、人件費がいかに大きいかを知ることにより、働き方が変わります。
利益や付加価値に貢献していないと自分の人件費が真っ先に削減対象になってしまうわけですから。
厳しい時代になってきましたから、こういう視点で働ける社員が企業からは求められます。
転職の際も同じです。
前の会社でどのようにして会社の付加価値創造に貢献してきたのか?
ここを見られるわけですね。
そういう視点を持って働いていない人は、次の会社でも同じですから。
だから、まず、今の環境でどのようにして働くか。
そこを見つめることが転職成功への一番の近道でもあるのだと思います。
この社長が最後に言っていたのは、
そんな風に前向きに改善活動をしてくれる社員を増やすためには、経営者がしっかりしていなければならない。
頑張った先に何があるのかという成長戦略、ビジョンを示してあげなければがんばれないからね。
ということでした。
こういう社長のお手伝いをすることができるのが、人材サービス業のやりがいです。
ちなみに、話は変わりますが、コスト削減として「裏紙」を使うことをどうとらえるか?
コピー用紙の裏を使わないのはもったいないという考えと
裏紙を使うための手間をかける労力がもったいないという考え
皆さんはどちらですか?
以前、読んだコピー用紙の裏は使うな!―コスト削減の真実 (朝日新書 37)
という本が面白かったです。