損保時代の記憶が蘇る
経営学者の楠木 建氏が日経新聞で現在連載中の「私の履歴書」石原邦夫氏(東京海上日動火災元社長)について、「桁外れにつまらない」と論じている記事がとても面白かった。
「私の履歴書」は昔は好きだったのですが、最近はつまらないと思うことが多く、読む機会が減りました。ついつい波乱万丈の人生やハラハラ・ドキドキを求めてしまうのかなあ。ジャパネットたかたの高田社長やニトリの似鳥社長の話などは夢中になりましたね。
今月も、「私の履歴書」は読んでいないのですが、今回の記事にある
淡々とした仕事生活の回想が延々と続く。ヤマはない。オチもない。波乱も万丈もない。
という内容がめちゃくちゃ想像できて笑ってしまいました。
というのも、私の損保時代の記憶が鮮明によみがえってきたから。
特に強くよみがえってきたのが、たまたま支店長と飲んだ時のこと。(新卒2年目で支店長と直接話せる機会などほとんどなかったのだけど、たまたま会社の飲み会の後に先輩と3人で2軒目だか3軒目に行くことになったような。。。)
その支店長は出世コースに乗っている方で、とても愛想がよく、代理店さんとの距離も近い方でした。接待も多く、いつもニコニコ楽しそうに盛り上がっているので、私を含め多くの人が「酒好き」「ゴルフ好き」と認識していました。
その支店長が、そのお店で
「実はゴルフも酒づきあいも好きではない。本当は自宅で静かに本を読んでいるのが好きなんだ」
と寂しそうに語ったのです。
支店長まで出世するのは一握りで、語弊もありますが、憧れのポジションについている偉い方です。それを聞いてものすごくびっくりしたと同時に、強い虚しさを覚えました。「こんな立場になっても、自分を偽って生きていかないといけないのだなあ」と感じたのです。当時、保険会社での生活に窮屈さを感じていた自分は、サラリーマンを辞めたいという思いが強くなりました。
そんな経験から、損保の経営者の「私の履歴書」は私も「つまらない」と感じるだろうなあと想像したわけです。私の勝手な価値観なんですけどね。
とはいえ、「つまらない」ように感じる一方、職務のために自分を抑えられる人の強さもわかります。
石原氏のように、淡々と誠実、真摯かつ真面目、周囲に配慮をしつつ、調和を重んじながらひとつひとつの仕事にきちんと向き合える人だからこそ、社長を託され、大任を果たせたのである。
まさにそういうことなんだと。その支店長も各支店で大きな業績を残していました。だから支店長になったわけですが。。。やはり、私にはこういう組織でやっていく才覚はありませんね(笑)
それにしてもこの記事はすごい。「つまらない」と思いつつも、石原氏の「私の履歴書」を読んでみたいという気にさせるのだから。