先行投資
先日ある鉄の加工メーカーを訪問しました。
鉄の業界はリーマンショック以降、景気の影響を大きく受けていて厳しい経営のかじ取りが要求されています。
同社もそれまでの成長路線が嘘のように売上が落ち込み、現在は、何とか前年の8割程度の売上までは戻したものの、社員は10名ほど減り、前期は1億円の赤字が出たそうです。
そんな状態なので、社長も厳しい顔をしていると思いきやものすごくポジティブで、逆に元気をもらって帰ってきました。
驚いたのは、何とこの時期に将来に向けて1億円の投資をすることを決めたそうです。
今のままのモノづくりでは、この先、中国やアジアに絶対に勝てません。
コスト競争力で明らかに不利な以上、ただがむしゃらに頑張り続けるだけではじり貧なのは目に見えています。
その中で、技術革新によって、企業成長を実現しようとしていました。
製造工程を改善することによりコストカットをするのではなく、製造方法そのものを完全に見直すことによってコストカットをする方法を考えていました。
詳細は書けないのですが、まだ日本にはない技術により、すでに試作品も出来上がっていました。
この技術では、従来数万円する部品が数千円でできるようになるそうです。
そのために必要な機械を購入するために1億円の投資をするわけです。
日本には限定20台しか販売されないというドイツ製の最新の機器を真っ先に購入するというのですからすごい勇気です。
現在開発中の製品が、実際に商品化されるまでには、様々な検査が必要ですから、2年程度はかかります。
投資の元がとれるのはその先の話。
それでも、ものづくり日本にしかできない部品のコストダウンを実現させるという夢(夢ではなくすでに目標ですね)を熱く語っていました。
どんな環境であろうと、5年後、10年後のあるべき姿を模索し、それに向かって突き進むのが経営です。
そんな社長の熱い話を聞きながら、自分にはまだまだ頑張りが足りないなあと感じると共に、人材業界も革新しないといけないなあと感じました。